タルキール龍紀伝で【強迫】が帰ってきた。これによって現スタンダードには【思考囲い】、【蔑み】、【強迫】という1マナの手札破壊呪文が3種類共存する環境となった。この3種の中でもっとも使用頻度が高いのは言うまでもなく【思考囲い】だ。
【思考囲い】というカードはある意味で自分や対戦相手のキープ基準を否定する。この7枚、この6枚だからキープしたのに【思考囲い】でそのキープ基準となるカードを落とされたので、結果として追加で1マリガンした状態からゲームを始めることになった、という経験は誰にでもあるはずだ。
【思考囲い】に限った話ではないが、手札破壊系の呪文のほとんどはそのコストが軽めに設定されている。その上で純粋に1:1交換を行えるわけだが、この1:1という意味合いは例えば【稲妻】で【秘密を掘り下げる者】を除去するといった意味合いとは大きく違ってくる部分がある。
確かに【稲妻】は【秘密を掘り下げる者】をそれ1枚で除去することができるが、3/4より育ってしまった【タルモゴイフ】や【包囲サイ】を除去することは出来ない。一方【思考囲い】は、対処したいそのカードがすでに場に出てしまっているのではない限り、ほぼ確実に1:1交換を迫ることが出来る。
もちろん相手の手札に自分が狙い定めたカードが常にあるわけではない。しかしそういった場合にも手札破壊呪文には相手の手札をすべて見ることで情報というアドバンテージを得ることが出来る。自分にとって脅威であると予想したカードが相手の手札にない場合、それは言い換えれば自分にとっての安全を買ったことと同意だ。
問題なのは手札破壊呪文を「いつ」プレイするかだ。私見で申し訳ないのだが、自分の周囲にも【思考囲い】などの使い方がもったいないプレイヤーが割と多い。初手の7枚に満足してゲームを始める。1ターン目、他に特にすることがないからマナカーブにそって【思考囲い】をプレイする、というのは今も昔も少なからず目にしてきた光景だし、実際昔の自分もそういう動きをしていたのは記憶にある。
だがそれは大きな間違いだ。レガシーなどのようにコンボデッキが蔓延する高速環境であるのなら、1ターン目の手札破壊はもはや定石と呼ばれるのは頷ける。だが、ことスタンダードという環境について言えば1ターン目の【思考囲い】、あるいは【強迫】などは決して褒められた行動であるとは言えない。
例を挙げることにする。
あなたはアブザンアグロデッキを使用しており、対戦相手のデッキは青黒コントロールデッキだ。1ゲーム目、あなたは自分のクリーチャーをことごとく除去された上に【時を越えた探索】などでアドバンテージを取られ、【精霊龍、ウギン】に叩きのめされている。
あなたのメインデッキには【思考囲い】が2枚入っており、サイドボードには残りの2枚、そして追加分として1枚の【強迫】が用意されていた。あなたは【胆汁病】などの青黒コントロール相手に腐るカードの代わりに、追加の【思考囲い】を2枚と【強迫】を1枚加え、微調整を施した。そして迎えた2ゲーム目、あなたは先手を選び、初手の7枚は以下の様なものとなった。
【疾病の神殿】、【吹きさらしの荒野】、【コイロスの洞窟】、【羊毛鬣のライオン】、【ラクシャーサの死与え】、【思考囲い】、【アブザンの魔除け】
十分な枚数の土地、軽めのクロック、妨害手段に手札補充と申し分のない初手に恵まれた。さて、ではこの手札でゲームを始めたとして果たしてあなたは1ターン目に【コイロスの洞窟】から【思考囲い】をプレイするだろうか?
多くの人はプレイしないことを選ぶはずだ。ここでは【疾病の神殿】を置いて占術を行い、今後のゲームプランを組み立てるだろう。対して青黒コントロール側の挙動として予想されるのは、ほとんどの場合タップインの土地を置いてターンを返すことだ。一応相手からの【思考囲い】による干渉もあり得るが、その場合でもこの初手は十分に強い。
こちらの理想の動きとしては、2ターン目にまず【羊毛鬣のライオン】でお伺いを立てる。仮にこれが対処されたなら、3ターン目に【思考囲い】を経由してからの【ラクシャーサの死与え】でこちらの勝ちはより確実なものとなる。もしも【思考囲い】で覗いた相手の手札に【ラクシャーサの死与え】に対する回答がなければなおさらだ。
上記ではあなたも相手もそれぞれ【思考囲い】を使うタイミングがあるということで話を進めたが、その2つの【思考囲い】の使い方の違いはわかってもらえただろうか?アブザンアグロ側が使う【思考囲い】とはつまり、こちらの攻め手を弾くカードを安全確認のために露払いするものだ。対して青黒コントロール側の使う【思考囲い】は、アブザン側の序盤から展開される軽めのクロックを捌くために使われるものだ。
この2種類の【思考囲い】は使われるタイミングこそ違うものの、本質的な部分ではやっていることは全く同じである。ようは、「自分にとって脅威となるカードを落とすために使う」ということだ。そしてそれは【思考囲い】を使うタイミングに直結する。
アブザンアグロ側は自分のクロックを除去するカード……【胆汁病】や【英雄の破滅】を落とすことによって自分のクロックを維持することができる。あるいは4-5ターン目、互いに手札の消耗が多くなってきた頃に相手から繰り出される【時を越えた探索】や、もっと後半にゲームを決めてくるであろう【精霊龍、ウギン】や【真珠湖の古きもの】を落とすことによって相手のフィニッシャーを対処することが出来る。
対して青黒コントロール側は、相手の最序盤の攻め手をいかに対処できるかが問題になる。アブザンアグロ側のクロックは大体2ターン目からなので、後手の1ターン目でも【思考囲い】によってその出鼻をくじくことが出来る。
一言にしてしまえば「使いどころが肝心」というただそれだけのことなのだが、これができてないプレイヤーはきっと思っている以上に多い。そしてこれができるだけでゲームの盤面は恐ろしいほどに変化するはずだ。自分としても長くMTGに関わってきてようやく気付かされたことなので偉そうなことは言えないのだが、もし思い当たることがあるのであればぜひ意識して実践してみて欲しい。そうじゃないとあまりにももったいないと思う。
【思考囲い】というカードはある意味で自分や対戦相手のキープ基準を否定する。この7枚、この6枚だからキープしたのに【思考囲い】でそのキープ基準となるカードを落とされたので、結果として追加で1マリガンした状態からゲームを始めることになった、という経験は誰にでもあるはずだ。
【思考囲い】に限った話ではないが、手札破壊系の呪文のほとんどはそのコストが軽めに設定されている。その上で純粋に1:1交換を行えるわけだが、この1:1という意味合いは例えば【稲妻】で【秘密を掘り下げる者】を除去するといった意味合いとは大きく違ってくる部分がある。
確かに【稲妻】は【秘密を掘り下げる者】をそれ1枚で除去することができるが、3/4より育ってしまった【タルモゴイフ】や【包囲サイ】を除去することは出来ない。一方【思考囲い】は、対処したいそのカードがすでに場に出てしまっているのではない限り、ほぼ確実に1:1交換を迫ることが出来る。
もちろん相手の手札に自分が狙い定めたカードが常にあるわけではない。しかしそういった場合にも手札破壊呪文には相手の手札をすべて見ることで情報というアドバンテージを得ることが出来る。自分にとって脅威であると予想したカードが相手の手札にない場合、それは言い換えれば自分にとっての安全を買ったことと同意だ。
問題なのは手札破壊呪文を「いつ」プレイするかだ。私見で申し訳ないのだが、自分の周囲にも【思考囲い】などの使い方がもったいないプレイヤーが割と多い。初手の7枚に満足してゲームを始める。1ターン目、他に特にすることがないからマナカーブにそって【思考囲い】をプレイする、というのは今も昔も少なからず目にしてきた光景だし、実際昔の自分もそういう動きをしていたのは記憶にある。
だがそれは大きな間違いだ。レガシーなどのようにコンボデッキが蔓延する高速環境であるのなら、1ターン目の手札破壊はもはや定石と呼ばれるのは頷ける。だが、ことスタンダードという環境について言えば1ターン目の【思考囲い】、あるいは【強迫】などは決して褒められた行動であるとは言えない。
例を挙げることにする。
あなたはアブザンアグロデッキを使用しており、対戦相手のデッキは青黒コントロールデッキだ。1ゲーム目、あなたは自分のクリーチャーをことごとく除去された上に【時を越えた探索】などでアドバンテージを取られ、【精霊龍、ウギン】に叩きのめされている。
あなたのメインデッキには【思考囲い】が2枚入っており、サイドボードには残りの2枚、そして追加分として1枚の【強迫】が用意されていた。あなたは【胆汁病】などの青黒コントロール相手に腐るカードの代わりに、追加の【思考囲い】を2枚と【強迫】を1枚加え、微調整を施した。そして迎えた2ゲーム目、あなたは先手を選び、初手の7枚は以下の様なものとなった。
【疾病の神殿】、【吹きさらしの荒野】、【コイロスの洞窟】、【羊毛鬣のライオン】、【ラクシャーサの死与え】、【思考囲い】、【アブザンの魔除け】
十分な枚数の土地、軽めのクロック、妨害手段に手札補充と申し分のない初手に恵まれた。さて、ではこの手札でゲームを始めたとして果たしてあなたは1ターン目に【コイロスの洞窟】から【思考囲い】をプレイするだろうか?
多くの人はプレイしないことを選ぶはずだ。ここでは【疾病の神殿】を置いて占術を行い、今後のゲームプランを組み立てるだろう。対して青黒コントロール側の挙動として予想されるのは、ほとんどの場合タップインの土地を置いてターンを返すことだ。一応相手からの【思考囲い】による干渉もあり得るが、その場合でもこの初手は十分に強い。
こちらの理想の動きとしては、2ターン目にまず【羊毛鬣のライオン】でお伺いを立てる。仮にこれが対処されたなら、3ターン目に【思考囲い】を経由してからの【ラクシャーサの死与え】でこちらの勝ちはより確実なものとなる。もしも【思考囲い】で覗いた相手の手札に【ラクシャーサの死与え】に対する回答がなければなおさらだ。
上記ではあなたも相手もそれぞれ【思考囲い】を使うタイミングがあるということで話を進めたが、その2つの【思考囲い】の使い方の違いはわかってもらえただろうか?アブザンアグロ側が使う【思考囲い】とはつまり、こちらの攻め手を弾くカードを安全確認のために露払いするものだ。対して青黒コントロール側の使う【思考囲い】は、アブザン側の序盤から展開される軽めのクロックを捌くために使われるものだ。
この2種類の【思考囲い】は使われるタイミングこそ違うものの、本質的な部分ではやっていることは全く同じである。ようは、「自分にとって脅威となるカードを落とすために使う」ということだ。そしてそれは【思考囲い】を使うタイミングに直結する。
アブザンアグロ側は自分のクロックを除去するカード……【胆汁病】や【英雄の破滅】を落とすことによって自分のクロックを維持することができる。あるいは4-5ターン目、互いに手札の消耗が多くなってきた頃に相手から繰り出される【時を越えた探索】や、もっと後半にゲームを決めてくるであろう【精霊龍、ウギン】や【真珠湖の古きもの】を落とすことによって相手のフィニッシャーを対処することが出来る。
対して青黒コントロール側は、相手の最序盤の攻め手をいかに対処できるかが問題になる。アブザンアグロ側のクロックは大体2ターン目からなので、後手の1ターン目でも【思考囲い】によってその出鼻をくじくことが出来る。
一言にしてしまえば「使いどころが肝心」というただそれだけのことなのだが、これができてないプレイヤーはきっと思っている以上に多い。そしてこれができるだけでゲームの盤面は恐ろしいほどに変化するはずだ。自分としても長くMTGに関わってきてようやく気付かされたことなので偉そうなことは言えないのだが、もし思い当たることがあるのであればぜひ意識して実践してみて欲しい。そうじゃないとあまりにももったいないと思う。
コメント
昨日まさにフライデーでうまい使い方されてディグ落とされました
(^人^)
高橋優太プロも囲いの記事書いてたけどこっちの方が納得できました
手なりととりあえずはほんと害悪。土地の置き方一つで全部台無しになる。
この手の記事はいいですよね。
Reid Dukeの記事もだいぶ分かりやすくて好きです。
僕は元締めが好きです(真顔)
>番長
2t目に死与えを出すと返しの胆汁病をケアできてない。1t目思考囲いから入って除去抜いてから2t目死与えとかなら分かる。ライオンは除去される前提で出していくつもりだった。死与えが生き残ると青黒は何もできなくなって死ぬよ。櫃で流すくらいしか選択肢が残らない。というのが私見。
私もこの3種の使い方をもっと考えなければならないと思いました。
言葉にするのは簡単だけど、実際できないもんですよね。裏目に出ることもあるので。
手なりでいいときもあるからね(豹変)