世間はすっかり禁止改定の話題で盛り上がっているようだが、それと同じくらい目前に控えているのがスタンダードのローテーションの変化だ。
次の金曜日には最新エキスパンションである「イニストラードを覆う影」が発売となり、それと同時にタルキール覇王譚と運命再編はスタンダードのセットを去ることになる。

フェッチランド+バトルランドという強固なマナベースを失うことにより、今後のスタンダードは2色が環境の中心となるだろう。3色目をタッチするくらいの余裕はありそうだが、これまで異常にマナベースに掛かる負担を考えるとあまりおすすめはできないようだ。



さて、先の話はここまで。ここからは間もなく「過去」になろうとしている現在の話だ。



マルドゥを使い続けて1年と少しくらいだろうか。とうとう私はこれまでのスタンダード環境で包囲サイを使うことは1度もなかった。包囲サイを筆頭としたアブザンは幾度となく各種トーナメントシーンの最前線を歩き続けていたが、マルドゥが環境を圧巻する、あるいはそれに近い大きな活躍を見せることは稀なことだった。

カードプールの都合もあったが、マルドゥというカラーはアグロデッキよりもミッドレンジやコントロールに向いた氏族だった。クリーチャーの除去はマルドゥの最も得意とするところであり、手札破壊も絡めてのボードコントロール能力は確かなものだった。

ただ、その性質上どうしても受けに回る(私らしくはないが、ここでは性的な意味ではないぞ!)タイプになりがちだった。基本的に相手の息切れを見てからフィニッシャーを出すことによってゲームの決着を望むデッキであったため、こちらよりも多くのリカバリー手段を持つデッキというのはただそれだけで苦手なものだった。

アブザンやエスパーなどはその最たるもので、アブザンはアグロデッキでありながら信じられないほどの粘り強さを持っている。棲家の防御者はこちらの血の滲むような苦労を鼻で笑うかのように盤面の再構成を可能にし、アブザンの魔除けはアンコモンとは思えないほどの汎用性の高さを誇る。

エスパーははじける破滅が活躍するマッチアップでこそあるものの、マルドゥ側にも軽めのクロックが限られているために序盤から強いプレッシャーを与えていくことが困難だった。消耗戦になれば時を越えた探索のある分だけことらが不利になるのは明白であり、豊富な除去呪文の半分ほどは標的を見失ったまま手札に抱えられていることは少なくない。

恐らく通算では、私がマルドゥを使い続けて得た勝敗は負け越しになるだろう。私の周囲にアブザンやエスパーがある程度存在していたこともそうだが、マルドゥというデッキそのものが相手のデッキとの噛み合い次第で非情にブレの生じやすい不安定なデッキだったということも間違いない。

除去ハンドをキープしたら相手も除去ハンドだったとか、肉多めでキープした結果相手の置物に触れずに終わってしまったとか。そういうことは誰にでも起こりうることだし、それを踏まえた上でマルドゥを使い続けてきたのだからそこには何の文句はない。

惜しむらくは、私自身がマルドゥを長い間使い続けた中で目新しい結果を残せなかったということだ。これは完全に乗り手の性能であることは疑いの余地はなく(熟練のカマキリ乗りも油断していると食べられてしまうこともあるようだし)、もっとうまくやれたのではないかと思うことはあまりにも多すぎる。

もともと同じデッキばかり使い続けていたこともあり、地元ではもう私の顔さえ見ればあいつはマルドゥだと認識されるくらいにはなっていただろう。それはそれでキャラ付けのようなものが出来たという意味で喜ばしいことではあるが(それ以上にホモキャラで立ち居地を確定させられていたのはまことに遺憾である。諸君、法廷で会おう!)、欲を言えばやはりもう少し結果が欲しかったというのが本音だ。



ともあれ、このシーズンは非常に楽しく遊ぶことができた。マルドゥは確かに不安定なデッキで、相手との噛み合い次第でその強さが100に感じられることもあれば20にしか感じられないこともあるデッキだった。デッキの内部構造にいたっても、その時その時で自分なりに微調整を施すことで少しでもめたーゲーム上位のデッキと渡り合おうと力を注いだつもりだ。

そんな中、絶対に4枚から減らすことのないカードはたった1種類だけだった。はじける破滅。このカードがあったからこそマルドゥはマルドゥであり続けられ、またマルドゥを使うための理由となったのだ。マルドゥをマルドゥたらしめたこのカードこそが、このシーズンの私をずっと支え続けてくれたのは間違いない。

はじける破滅にできることはたった1つだけだ。対戦相手のコントロールするクリーチャーの中から最もパワーの高いクリーチャーを排除し、そのコントローラーに2点のダメージを与える。ただそれだけのことだ。ただそれだけのことがマルドゥを支え続けた。

はじける破滅はアブザンの魔除けに劣る。それは汎用性が低いからだ。コントロールデッキ相手には腐りやすく、狙ったクリーチャーを確実に倒すことができるわけではない。死霧の猛禽を追放することも出来なければ、搭載歩行機械の上に追加の+1/+1カウンターを2個置くことも出来ないし、2枚のカードを引くことなんてもっての他だ。

はじける破滅はテンポを失いやすい。インスタントではあるが、必要に応じてはメインでの使用をせざるを得ないケースが他のスペルと比較しても非情に多い。龍王オジュタイを倒すための取って置きではあるが、相手の場のヴリンの神童、ジェイスを放置することはできないからだ。しばしばはじける破滅は自分の展開を阻害しながら使わなくてはいけないもので、マナカーブに沿って綺麗に使うことは少ないものだ。

はじける破滅は劣勢を覆すカードではない。3マナのスペルにそこまで過度な期待をするのが無理というものだが、やはり不確定な除去というのは盤面を引っくり返すことはできない。このカードは有利な盤面をより有利にする類のカードであり、主に攻めとして(ここでも性的な意味ではないぞ!)使うべきカードなのだ。

とはいえ、それでもはじける破滅が葬ってきた龍王オジュタイと包囲サイの数は計り知れないものになるだろう。私は今まで食べたパンの数をいちいち覚えていないので分からないが、少なくとも500や600ではないだろう。だがより重要なのは、恐らく累計で10000点以上のライフをあの憎たらしいサイに奪われているということだ(数えてはいないがこれだけは自信を持って言えるぞ!)。

それでもやはり、はじける破滅というカードなしでマルドゥという氏族のことは語れない。このカードのおかげで勝てたゲームは数知れず、このカードが引けなかったせいで勝ちを逃したゲームも数知れず。

無数の包囲サイを打ち倒してきたこともそうだし、時にはこのカードと道の探求者だけで勝利したこともあった。相手からすればこちらが構えていると分かっていても、その前に何かを差し出さなくてはならないタイミングというものもあったはずだ。そういう盤面では無類の強さを発揮するこのカードが私は大好きだった。

はじける破滅は私がゲームの主導権を握るために必要不可欠なカードだった。オープニングハンドの7枚にこのカードが1枚あると不思議な安心感を覚えた。頭の中でゲームの展開がすらすらと組み上がっていくのだ。理由のない心強さのようなものさえ感じだ。それだけ私はこのカードに……マルドゥに心酔していたのだなと、今になって改めて思い知らされている。



悲しいことに、はじける破滅は間もなくスタンダードを去る。このスペルがモダン以下の環境で絶対に使われないとは言わないが、昨今のメタゲームを見るに(そして今回の禁止改定を経ても)使われることは恐らく稀だろう。正真正銘、お別れの時間がやって来た、ということだ。

いつかまた、私がはじける破滅を手に取ることはあるだろうか。その答えは今はまだ分からない。何かの拍子でまたタルキールの世界がフィーチャーされるようであれば(それはきっと遠い未来の話になるだろうし、タルキールの世界観はあれで完成されていると私は思っているのでかなりの望み薄ではあるが)、もしかしたら再会できるのかもしれない。その日が来るのを願いはするが、期待はしないでおくことにしよう。



それでは最後に、私同様このシーズンをマルドゥと共に歩み続けた名前も顔も知らない諸君に最大の感謝を。トーナメントシーンで見ず知らずの誰かがマルドゥを使っているのを見るだけで、私はとても嬉しい気持ちになることができた。
心からありがとうを。





そして願わくば、はじける「破滅」があなたへともたらしたものが、1つでも多くの「祝福」であったことを信じて。




コメント

ひるぎ
2016年4月5日19:50

ぼくはいつかのゲームデーのスルタイアグロ好きです

中野↑くん↓
2016年4月5日20:04

>ひるぎちゃん

申し訳ないが黒歴史を掘り下げるのはNG

ふぁせ
2016年4月5日21:18

俺たちはマルドゥ!

中野↑くん↓
2016年4月6日22:26

>ふぁせ氏

そうだよ!(強襲)

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